蒲生の家 

所在地:埼玉県  用途:住宅  種別:新築  構造:木造  延床面積:149.03m2

『歴史をリフレクトした家』
埼玉県越谷市蒲生の住宅の建て替えである。
敷地は開放的で十分な余裕があり、近隣とも適度な距離を保って計画する事が可能であった。敷地内にも緑が多く豊かな環境で、設計的には制約の少ない敷地である。 この場所に50余年、木造の平屋建てに住まわれていた施主は老朽化に伴い建て替えを計画し、今までの生活環境や今後の生活の事などから、同じ平家建てを希望された。 平屋にすると決まってからは、環境、美観、経済性から成り立つプロポーションによって如何に『美しい屋根』を架けられるかに注力した。 建物配置は、既存の家の位置とほぼ同じで敷地北側に寄せて計画している。色々な条件を考えてもごく自然な配置計画である前提だが、この地に人生の半分以上を住み続けてきた施主が新たに同じ敷地に既存の家と全く異なる建ち方をしている家を建てて、住む事がどうも想像出来なかった事も大きく起因しているだろう。 設計スタート時に具体的な要望をまとめたリスト(30〜40項目)を受取り、これを基に平面計画を行なっている。要望とは別に、グリッドの平面、切り取る風景、回遊動線など『既存の家での生活で感じていた感覚的なもの』をふとした瞬間感じられるような住み手にしか分からない『しかけ』を散りばめている。 50余年住み続けられた既存の家の歴史を反映したこの家もまた、世代を超えて住み継がれてくれれば幸いである。(テキスト:川原崎)

_B5A4238R-75 南側外観。深い庇とチャコールグレーの外壁が落ち着いた趣のある佇まい。 _B5A4197R-2 奥行きのある出窓は、コンクリートの基礎を跳ねだして支えている。窓は『アルミ』と『木』の複合サッシ。 _B5A4190 シルバーのガルバリウム鋼板一文字葺き。深い庇の下を通り、玄関にアプローチする。 _B5A4184 米杉羽目板張りの玄関ドア。ドア表面には鍵穴のみのシンプルなデザイン。 _B5A4093 高い天井で開放感のある玄関ホール。中庭のデッキ通路を介して視線は家の奥まで気持ちよく抜けていく。曲面の壁がゆるやかにリビングダイニングへと導いてくれる。蓄熱式の床暖房を完備している為、全室床暖房用のオークフローリング。 _B5A4062 外部から続く曲面のボリューム。内部はキッチンから利用できる食品庫になっている。土間は天然石洗い出し仕上げ。 _B5A4001 左側に中庭、右側には大きな出窓、奥に和室と全方向に開いている開放的なリビングダイニング。中庭のデッキは、大きな木製窓を開放すれば室内とつながった外のダイニングルームとなる。 _B5A4004 南側に面した奥行きのある出窓は腰掛けたり、寝転がったり、物を飾ったりと使い方は様々。下部は全て引き出し収納となっている。あえて出窓の天井を下げて、庭への視線が下がるように配慮している。 _B5A4008 ダイニングテーブルとキッチンカウンターは壁の角度に沿った台形型のこの家オリジナルのデザイン。 _B5A4036 空間のかたちに合わせた特注キッチン。天井には外の深い庇をしっかりと支える大きな隅木が横たわる。 _B5A4050 中庭に向かって大きな窓を持った開放的な寝室1。上部にあるスリット窓から朝日が降り注ぎ、夜には星空が見える。造り付けた本棚にはご主人の書籍が並ぶ予定。 _B5A4103 丸いトイレのある廊下がリビング側と寝室側を結ぶ動線。中庭を中心に家の中を廻る事ができる回遊動線となっている。 _B5A4105 家の中心にある丸いトイレ。内部は常にトップライトからの自然光で満たされている。 _B5A4118 中庭に面していない独立した寝室2。住み手の生活スタイルに応じてプライバシーを保てるプランニングとなっている。カウンター兼テレビ台は床材に合わせてオーク突き板で製作。 _B5A4145 居室は全て屋根の勾配と同じ斜天井。下地の構造用合板を露している。 _B5A4115 各寝室の枕元に出窓を設けている。防犯性に配慮しながら通風を確保している。間接照明がやわらかく壁を照らす。 _B5A4151R 和室の仏壇は、以前の家から使っている建具と欄間を新しく作った枠に嵌め込んで納めている。日に焼けた建具と欄間の色が過ぎた時間を感じさせるデザイン。 _B5A4175 周囲2階の高さからは屋根がよく見える。環境条件と経済性から合理的に成り立つかたちによって、如何に美しい屋根を掛けられるかに注力した。 kizonnoie 築50余年の既存の家。本工事前に解体された。