野沢温泉かわもとや 201号室

所在地:長野県下高井郡野沢温泉村  用途:旅館客室  種別:リノベーション  延べ面積:37m2  施工:北誠商事

野沢温泉村の旅館『かわもとや』201号室の改装プロジェクト。
良質なパウダースノーと温泉を求めてやってくる外国人旅行客が増える中、既存の日本間客室を長期滞在に対応できるコンドミニアム形式に変えたいというオーダーである。
押入部分の襖を取払いキッチンを設置。
床の間を解体し造作でテーブルとベンチを製作。
ユニットバスを撤去してパウダーコーナー兼シャワーブースに更新。
窓際の内縁は床高を40cm上げて小上がり(下部を収納)にして樹脂の織物シートを敷き込んだ。
小上がりを仕切る建具には3つのサイズの孔を組み合わせて、空調効率・抜け感・明るさ感を考慮して開口率を決定しCADデータをそのままNCルーターに入力して正確に開孔している。
新しく加える要素(フローリング、ヘッドカウンター、テーブル、ベンチ、壁板など)として『信州産カラマツ』を採用した。木目がはっきりし、赤みが美しい『カラマツ』は時間の経過によって今ある素材たちと共存してくれることだろう。
『間取り』『天井の高さ』『落とし掛け』『建具枠』『長押』『床柱』『畳』など、既存の日本間スケールを形づくるものには手を付けず、新しく加える要素とのバランスを計りながら、新たな空間と機能を設えた。
『内装』はRCの構造体から解放されすべてを壊せる状況の中で、室内の仕上げ材が特別痛んでいる事もなく、何を残して何を新しくするのか、和なのか洋なのか、1つ1つの要素を吟味しながら、『ステレオタイプな日本間客室』でもなく、『モダンなゲストルーム』とも違うスタイルを考えていたのは、日本の原風景を求めて野沢温泉村にやってくる外国人旅行客を意識していた事も大きく起因しているだろう。  (テキスト・写真撮影:川原崎)

01_1070048%ef%bc%88big
客室全景

02_1070025
床の間であった場所に『信州産カラマツ』のフローリング、テーブル、ベンチ、板貼りを設えた。

03_1070028
バブル(泡)にも雪にも見える間仕切り戸の孔はNCルーターで正確に開孔。

04_1070030
押入であった場所にはキッチンを設置。冷蔵庫や電子レンジなどもあり長期滞在客に備えている。その隣のトイレの丸窓は既存建具を流用。

05-1_1060833
内縁は40cm床高を上げて小上がりになっている。床下は収納になっており長期滞在客のキャビネットとして機能する。窓からは北信五岳が望める。

08_1060894
テーブルの上部にスポットライトを設置。

06_1060881
必要なところに必要な明るさだけを確保している。

09-1_1060907
ヘッドカウンターの両側にアッパーライトを設置。

09-2_1060909

10_1060865

10_1060920

11-1_1060934

12_1060929
パウダーコーナー兼シャワールーム。旅館には大浴場もあり、共同浴場(外湯)もあるのでシャワーブースのみ。洗面カウンターと天井材はカラマツ。

14_1060937
キッチン

14-1_1060849
ベンチは、通常柱として使われるカラマツの無垢材を一度金物で締め上げた後、テーブルの形にあわせて削りとっている。新しく見えてくる木材は全て『信州産カラマツ』で統一している。

15_1060951
既存窓の内側に『樹脂断熱窓』を設置し、2重サッシとしている。

16_1060956
直径30、50、70mmの3種類の孔を組み合わせている。

17_1060856
ベットのヘッドボードは元々窓についていた『障子』のフレームに透明の合わせガラスを入れて流用。

17-1_1060867
間仕切り戸は既存の建具枠に4枚戸納める為に、薄く製作。上部レールはアルミのアングルによるシンプルなデザイン。

18_1060971
トイレの扉は既存を流用している。かわいい小窓もそのまま流用。

19_1060828
間仕切り戸の孔は時間によって様々な空間を表出する。PDFExport

2016-10-03-14-24-17
既存の日本間客室201