krew architects : クルー建築設計事務所

Column

HOUSE IS LIVING 
~リビングから考える~

「あなたにとって家とは何ですか?」
「あなたは家に何を求めますか?」
よくこんな質問をTVや雑誌のタイトルで見かけますが、あなたなら何と答えますか。
普段、当たり前のように生活する為の機能が用意されている家にいると、使い勝手や広さについては考えても、それ以外に求める事など急に聞かれると戸惑ってしまうのではないでしょうか。

「家」について考える時、パッと思いつくのは「間取り」ではないでしょうか。何LDK欲しいなとか、何畳位は必要だなど、多くの方は自分たちの生活に必要な部屋数や広さにはイメージを持っている気がします。私達設計者は、間取りや寸法、使い勝手の要望をお聞きしながら、その中に潜む、住まう人たちが家に何を求め、どこを優先しているのかという本質的な欲求を探しだし、その人たちにあった「家」をつくりたいと考えています。
部屋の数が多い・広い=良い家 だと考えがちですし、思われがちですが、実際は生まれ育った環境やその人個人の空間感覚、また部屋と部屋のつなぎ方によっても、感じる広さや大きさには大分違いがあるのです。よってその事だけに固執していると、ちょっと部屋が狭くなったり、天井が低くなるとすぐに損をした気分になってしまい、折角の楽しい家づくりが台無しになってしまいます。

そこで、家の「間取り」ついて考えるにあたり、この様な考え方はいかがでしょうか。
まず、家に最低限必要な機能を考えてみましょう。
食事を作るところ(キッチン)
食べるところ(ダイニングルーム)
寝るところ(ベットルーム)
あとはお風呂とトイレは必要でしょう。
どんな家族でも習慣や生活スタイルの違いはあると思いますが、生活する為にと考えると、このくらいあれば生活は成りたちそうです。
通常の家にはこれにリビング(居間)と子供部屋をどうするかとなってくると思いますが、この「リビング(居間)」についてもう少し掘り下げて考えてみようと思います。

最近の家の「リビング」は、大きな薄型テレビが置いてあり、そこに向かって素敵なソファが置いてあるのをイメージしますが、このスペースって、本当にあなたの生活にあっているのでしょうか。例えば平日、お父さんは朝早く仕事に出て行って、夜遅く帰ってくる。日曜日は出張があったり、ゴルフにも行く。子供たちは学校から帰ってきたら、すぐ習い事に行ったり、遊びに行ったり。お母さんが働いていたら、会社から帰ってすぐキッチンに立って夕食の支度を始めなくてはいけない。家族がこのリビングでソファに腰掛け、大きなテレビに向かって過ごす団欒の時間は、どれほどあるのでしょうか。いやいや、うちは以外とその使い方で使っているよ、というご家庭は良いのです。ただ、家の中で一番日当たりのいい場所に一番広く天井の高い「リビング」が、実はほとんど使われていない⁈というご家庭は以外と多いのではないでしょうか。

よくよく考えてみると大抵の方は平日一番過ごしている部屋はベットルーム(寝てますが…)であるのかもしれないし、オープンキッチンにいるお母さんと話すために家族がダイニングにいる時間が長く、子供が勉強するのもダイニングテーブルを利用するという事をよく耳にします。家族の団欒の場になっているのは、忙しい現代において実は、食事をするところ(ダイニング)になっている気がします。

誤解のないようにしたいのは、「リビング」が必要ない、という話ではありません。
むしろ「リビング」は必要なのです。生活に最低限必要な機能とは別にあるこのスペースの在り方について考えることによって、その家族が家に求めることが見えてくるのではないか、という事なのです。

ある人は、部屋の真ん中で思う存分楽器を弾きたいかもしれません。
ある人は、たくさんの友達を呼んで、ホームパーティーやBBQを楽しみたいかもしれません。
ある人は、家で一番採光の入る明るい浴室でのんびりとした時間を過ごしたいかもしれません。
ある人は、大好きな本が詰まった本棚に囲まれて好きなだけ本を読んでいたいかもしれません。

「リビング」という場所は、どこの家でも同じような位置に配置され、同じような使われ方をするのではなく、各家庭の

“色”が現れるところ、言わば「自分たちが家に求めること」が一番反映できるところに他ならないのではないでしょうか。

変わった家を建てる必要なんて全くありません。ただ、忙しくストレスの多い現代社会において、住まう人達の生活にあった「家」が必要であるとは切に思います。安い買い物ではありませんので。

クルー建築設計事務所
川原崎唯史

施主と、設計者と、時々A.I.

施主と設計者
『家』の設計は、施主と設計者の共同作業です。そう聞くと少し違和感があるかもしれませんが、 施主と設計者は初めてお会いしてから家が完成するまでに、新築であれば1年くらいの時間(工事を含む)を共にして、じっくりと新しい家について話し合います。設計という行為は、設計者が要望を聞いて勝手に進めるというのではなく、これからの生活について一つ一つ話し合いながら一緒にその優先順位を決めていく、そんな作業だからです。勿論、家に関する私達の経験と専門的知識を大いに利用していただくのですが、自分たちのスタイルや考え方にこだわり、自ら積極的に家づくりに参加していただける方がほとんどです。

施主の癖を掴む
施主との設計に関する打ち合わせを、私達はできるだけ施主の住んでいる家で行いたいと希望しています。施主がリラックスして話をできる環境ということもありますが、一番の目的は、普段の生活ぶりを見ることによって、施主の理解を深める事にあります。ひと部屋でもその生活している空間に上がらせてもらい、これから建てる『家』について話し合う事は、お互いに大事であると考えています。持っているものの量や大事にしているもの、現在の生活での不便な点や気に入らない部分など、具体的な事を確認するのと同時に、その人たちがどのように空間を使い、またどのように家を住みこなしているかを知りたいと思っています。それは、カッコいいものがあるなとか、おしゃれだなといった好みの話ではなく、その人たちが使う空間にでている『癖』みたいな事を掴む作業でもあります。

施主からの要望
施主から新しい自分たちの家について多くの要望をいただきます。間取りの事、使い勝手の事、使いたい素材や考えているイメージ、細かい事ではコンセントの位置やドアノブの形に至るまで。与えられた要望一つ一つをふるいにかけ、本当に必要なのかどうかも含めて検討します。各部屋に光と風が行き届く、部屋同士の関係性、スムーズな家事の動線、普段の家での過ごし方からコレクションの置き場など、事細かく計画していきます。人それぞれ興味のあるところに若干の違いはありますが、比較的男性は、耐震・断熱・耐久性など『性能面』、女性は日々の手入れ、使い勝手、収納量など『機能面』に興味が集中する気がします。毎日の生活ではあまり衝突しないご夫婦でも、ローンを背負って建てる「自分たちの家」。何を優先していくのか、大いに議論を交わす必要があると思います。
 機能的が一番?
こうして施主の方々と話をしていてつくづく思うのは、世の中のほとんどの方は、『機能を優先する』という事です。(当たり前だろ!と言う声が聞こえてきそうですが・・笑)一般的に、モノにしても、スペースにしても、『機能的』と言うと『それが使いやすいか、それが必要な性能を発揮しているか』、が判断の基準になっていると思います。しかし家づくりにおいてこの事を優先し過ぎると、いつしか家づくりが辛い判断を迫られているような窮屈なものになってしまいがちです。勿論、楽しいことだけではない『家づくり』。利便性やコストパフォーマンスも考えて設計を進めることはとても大事であることに異存はありませんが、それと同時に思い描いた夢や楽しさも大事にしたいものです。

そこで『機能的』という言葉の解釈を少し拡げて、このように考えるのはいかがでしょうか。
『機能的 ≒ それが使いたくなるかどうか』
これまで経験してきた動きや空間はイメージにズレがなく、使い勝手を保証してくれるかもしれませんが、新しい家づくりを機に、それまで想像もしなかった心地よい空間と対面を果たした方々がたくさんいます。『想像していたイメージとは違うけど、この人たちの提案に賭けてみよう』、そう決心してもらうのも我々設計者の力量であり、仕事の一つであると考えています。その為には、施主と設計者のあいだに強くしっかりとした信頼関係を築きあげることは不可欠であると思います。

A.I. (人口知能)が設計する“超機能的住宅”
近い将来、こんな広告を目にする日が来るかもしれません。
今のような施主と設計者の対話は段々と減っていき、家づくりに掛かる手間・時間・お金は大幅に削減できるのかもしれません。しかしそれが皆さんの家づくりにおいて良い結果となるかどうか、まずはA.I.抜きで話し合っておきたいところです。

クルー建築設計事務所
川原崎唯史

自分たちの敷地

敷地は一期一会
古代より日本では良い土地と悪い土地があると言われてきました。霊的な話ではなく、統計的手法によって日本全国の様々な土地を測定し、その根拠を科学的に立証した工学博士もいます。農地としての良し悪しであったようですが、そこに生活する人々の体調・家畜・建物の耐久性や工場で作られる製品の品質にも明らかな変化があらわれたというので驚きです。
家を建てる時にはまず一定区域の土地=『敷地』を決めなければなりません。先祖代々住み続けている敷地、譲ってもらう敷地、新たに新天地で購入する敷地と、かたち・環境・価格、ひとつとして同じものがない『敷地』はまさに一期一会であると思います。人と人が出会う時のように、ビビっと直感的な判断が良くも悪くもありそうですが、購入する場合は高価なものだけに出会ってすぐに決めることは、実際難しいことだと思います。

個性的な敷地に可能性を見いだす
私達のもとに設計の依頼がくるときはすでに『敷地』が決まっている事がほとんどで、あまりどんな『敷地』が良いだろうかとじっくりと考えたことが無いかもしれません。設計する上で法的要件等、解決することが少ない敷地、言い換えれば『計画しやすい敷地』はあります。しかし変形地や傾斜地といった個性的な敷地は、一風変わった生活が想像できない家や工事費の増額というネガティブな側面がクローズアップされがちですが、整形地や平坦地にはない魅力もあり、 より豊かな住まいができる可能性を多分に秘めていると思います。密集した住宅地でよく見かける『旗竿敷地』も、その旗竿部分が建物に至るアプローチとして緑豊かに造られている住まいを見ると、十分にその有用性を感じます。
(旗竿敷地・・・公道に接する敷地の出入り口部分が細く通路状になっており、その奥に家を建てる広さを確保してある形の敷地)

敷地に課す5つの条件
『敷地』を決める時に、建物を計画する時と同じように様々な要望や大切にしたいことが誰にでもあると思います。しかし建物の計画と大きく違うのが敷地は『決められた状況のもの』であり、そのほとんどをこの時点では変えることができないという点ではないでしょうか。
そこで、『敷地』を決める時に考えられる「5つの条件」をまとめてみました。

  • 1、生活的な条件
    家族・自身の生活、職場,駅,学校,スーパーとの距離、利便性、将来性
  • 2、環境的な条件
    大きさ、形、日当たり、日影、風通し、プライバシー、道路との関係、インフラ設備
  • 3、法律的な条件
    用途地域、建ぺい率や容積率、斜線制限、地区計画
  • 4、予算的な条件
    価格、建築費とのバランス、不動産評価、リセール
  • 5、感覚的な条件
    自分が生まれ育った場所の記憶やその場の持つ雰囲気、空気感。好みによって感じられる印象。相性。

5つの条件は順序不同で、どの条件を優先し採用するかは人それぞれであり、これ以外の条件もあるかもしれません。ここでは不動産的観点の話は割愛しますが、この中で唯一他者と共感するのが難しいのが『5、感覚的な条件』

だと思います。

感覚的な条件は自分だけのもの
私は歩くことが好きなのでよく時間があれば街中や住宅地を歩くのですが時々ふと、「なんかこの辺りの雰囲気いいなあ。」と感じることがあります。皆さんも旅先や仕事で知らない場所に行ったとき、またはすでに敷地を探している方は、「なんかこの辺りは良い雰囲気だなぁ」とか、「絶対この辺には住みたくないよな」なんて経験はないでしょうか。道路の幅や塀の高さ、建物同士の間隔や屋根のライン、青々とした樹木や視覚的な抜け感など。緻密に計画されたものでなく、自然と自分や家族が心地よいと感じる場所、そんな不動産評価では比べられない『自分たちの敷地』は、必ず存在すると思います。

『敷地』が決まればいよいよ家の計画
敷地と家は切っても切れない関係にあります。よい住まいは必ず「この敷地だからこの家が建っている」と頷ける関係を築いています。家の建て方によっては、敷地の決められた状況を発展させる事も改善する事も可能です。『自分たちの敷地』にまだ見ぬ『自分たちの家』を建ててください。

クルー建築設計事務所
川原崎唯史

住まいの目

豊かな暮らしに寄り添う窓
住まいの歴史を辿ると時代、国や地域の気候や風土によってそこでの生活に応じたデザインが見られます。そこに垣間見える豊かな暮らしの中には、静かに寄り添う『窓』の存在があることに気づきます。現代、電気や空調の発展・都市部での住宅事情・生活の変化によって人々が住まいの『窓』に求める要求は多様化していますが、適切に配された『窓』が作り出す豊かな空間は時代や場所を越えて変わらない気がします。

外の環境とどう向きあうべきかを設計する
そもそも、普段はあまり意識しないかもしれませんが、住まいはいつも『窓』を介して「外の環境」に接しているのです。その為『窓』のデザインには、その住まいが「外の環境とどう向きあうべきか」を考え、室内空間に影響するもの、外部環境に影響するもの、を常に意識して設計を進めています。大きな窓、小さな窓、縦長窓、横長窓、天窓、地窓と、一つ一つの『窓』にはその役割に応じて大きさと形を与え、方角や使い勝手、設置する高さを決めていきます。

求められる役割と相反する性能
『窓』に求められる根本的な役割は今も昔もあまり変わりません。法律でも住まいの採光と換気によって『窓』の最低限の大きさは決められています。

  • 1、採光
    太陽の光を取り込む窓。密集した住宅地では壁や床に反射する間接光を取り込んだり、天井に設ける天窓も考慮する。
  • 2、通風
    風が入ってくる窓と風が出ていく窓。吹き抜けを利用して上昇気流によって風の流れを作る事もある。
  • 3、換気
    室内の汚れた空気を排出し、新鮮な空気を取り入れる窓。換気設備がその役を担う事もあるが自然換気が基本。
  • 4、眺望
    室内から見える外の景色をまるで額に納めた絵のように見せる窓。ピクチャーウィンドウとも呼ばれる。借景。
  • 5、デザイン
    内観にも外観にも影響する美しい窓。使い勝手も考慮されたシンプルで壊れにくい機構。

以上の5つの役割を果たすと同時にそれとは相反する断熱性、気密性、止水性、プライバシー(防犯性)、耐久性も確保しなければなりません。『窓』=住まいの壁に穴を開ける行為。言い方は悪いですが、窓から得るものと失うものを取引しているという状態にあることを忘れてはいけません。全ての役割と要求を適える設計は簡単な事ではありませんが、施主との会話の中に潜む住まいに求める優先順位を判断して、通り一遍の『窓』にならないように設計する事を心掛けています。

海を見る為の窓
少し話がそれますが、以前ホテルの設計を担当した時のことです。
全ての客室は目の前の海に向かって開放的な『窓』のデザインで打ち合わせに望んだところ、『これでは海から客室が丸見えだ。どうにか解決できないものか。』という話し合いになりました。最終的にはシンプルにカーテンを開閉する事でプライバシーを確保する事となりましたが、美しい海の景色を得るためには自分達も『窓』を開け、見られる関係になる。というすごく当たり前の事に気づかされた経験として、『窓』について考えるときはこの事をいつも思い出します。
ホテルと住まいでは日々の暮らしが関わるので判断する基準は違いますが、複雑な要素が絡み合う部分であるだけにできるだけシンプルに考えるようにしたいものです。

開くのか、閉じるのか
『窓』はよくその語源からも「建物の目」として例えられますが、外部(=社会)に対して開くのか閉じるのかという点においてよく言い当てた表現であると思います。
計画する場所によって『うちにはあまり関係ない』と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、快適な住まいの計画において切っても切れない『窓』のこと。開くのか閉じるのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

クルー建築設計事務所
川原崎唯史

これからの住まい

住まいづくりの拠りどころ
今、私たちが目にする『家』はさまざまな形やスタイル、デザインによってつくられています。日々更新される住宅情報には、災害に強い家、手間が掛からない家、環境に配慮した家、SNS映えする家など、移り変わる時代の中で価値観も多様化しているいま、何を拠りどころに自分たちの『住まい』を考えれば良いのか迷うのではないでしょうか。高額なものや長い間使うものは、誰もが必ずこれから先の事を踏まえて購入を決めていると思います。特に土地や家に関しては高額な上に、一度そこで生活をはじめると、例えば車のように気に入らないから乗り換えよう、なんて容易にできる事ではないでしょう。

例えば敷地を考えるとき、将来周りの環境はどのように変化していくのだろうか・・・。
例えば建物の構造を考えるとき、いつまた大きな地震が来るのだろうか・・・。
例えば間取りを考えるとき、以前の家はここが使いにくかった・・・。
例えば設備を考えるとき、どのくらいで故障するのか心配・・・。

これから起きる“変化”を想定する
ながく住み続けることができる『家』をつくるためには、「過去」の住まいの問題をしっかりと把握し、「現在」→「未来(将来)」を見据えたこれから起きる“変化”を想定することは、とても大事であると思います。生活をはじめた『家』は、その後さまざまな“変化”にさらされることになります。以下にその“変化”を考えてみましょう。

  • 1、材料・素材の変化
    家は完成後、構造材・外装材・内装材・設備など、経年による変化(劣化)が着実にはじまります。近年は耐候性やランニングコストの面からメンテナンスフリーを謳う建材もありますが、良くも悪くも“変化しない”表情はどこか味気ないと思う方も多いのではないでしょうか。適材適所の使い方やしっかりと手入をすることで、長く使い続けられる自然素材も多くあります。
  • 2、家族の変化
    時間と共に必ず変化していく家族。子供の成長、独立、親との同居など、家族の変化に対応できる間仕切りの計画や、他の用途に転用できるなど、柔軟性を備えたフレキシブルな計画は可能です。
  • 3、予想外の自然災害
    またいつ来るかわからない地震、近年増えている風水害等、どこまで備えれば良いのかは誰にもわかりません。耐震構造や制振構造、自然エネルギー利用、台風被害による破損防止など、備えあれば憂いなしかもしれませんが、価格に大きく関わる部分ですので採用は慎重に。
  • 4、流行
    ファッションや食ほどの速さではないですが、『家(建築)』にも流行り廃りがあります。交換ができる仕上げ材程度であればたいしたことではないですが、構造材のように交換できないものや数十年単位で使う部分に一過性のアイデアや斬新な表現を取り入れることは、慎重な判断が伴います。
  • 5、住めば都
    「どんな所でも、住み慣れるとそこが居心地よく思われてくる」という土地に対して言い当てたことわざですが、『家』に住んでから起こる“住人の気持ちの変化”という意味で、私はこれも重要な“変化”であると思います。逆説的な表現にはなりますが、人の気持ちは変わりやすいという前提でものごとを決めることも大事なことだと思います。

“変化”に対応できる家
『家』は、これから起きる“変化”にできるだけ対応できることが理想的だと思いますが、多くの『家』は、技術やコスト、スペースの問題から、すべてを許容することは難しいでしょう。ただしその変化を、ある程度想定し『住まいづくり』に活かすことによって、目先の情報に流されず、『現代のベーシックな住まい』に近づけられるのではないかと思っています。

家を移動する?
余談ですが、ある施主がふと、『将来、家を移動できたらいいのに・・・』と言っていました。移動する技術はありますが、普通の『家』を移動するにはまだまだ時間とコストが伴わず、一般解となるには時間が必要でしょう。ただ、もしそのくらい『家』を簡単に、生活にあわせて移動したり、変化したりすることができれば、現代の空き家問題や高齢者の一人暮らし、また若い世代が『家』を持つ重圧感、はもっと軽減できるのではないでしょうか。

クルー建築設計事務所
川原崎唯史